今日、国内のユースホステル市場は縮小の一途をたどっており、他の宿泊施設との競合によりそのアイデンティティの消滅さえ危惧されている。
そこで私は新しいユースホステスのアイデンティティを確立すべく、人々の新しい交流の仕方を模索した。
まず、日本文化とは何であろう。グローバル化の進む現代社会において、日本文化というものは実にあいまいでかつ希薄になってきている。もちろん純和風建築など、昔からの伝統文化を受け継いでいるものも多く残っているが、果たしてそれはユースホステル利用者が求めているものだろうか。
私は日本ならではの慣習も文化として寝入り移るのではないかと考え、縁側、そしてそれに付随する庭というものに着目した。人々が交流する場所は何も内部空間だけではない。外部にこそ新しい交流の輪が生まれるのではないで
あろうか。私は今回設計案に３つの毛色の異なる庭を配置した。

白砂と飛び石の美しい眺めを堪能するための静の庭
ウッドデッキで作られたアクティビティのための動の庭
そして両方を兼ね備えた亀が池にすむ縁側のある庭

さて、ここからいかなる交流が生まれるのだろうか。開けた緑豊かな空間できっと新たな交流の形が見つかるに違いない。